以前、大手の音楽教室で勤め始めた時、私にとって初めての発表会でしたが、終わった後お母様がかけよって来て、目をきらきらさせておっしゃいました。
「天野先生、天野先生に変わってから、うちの子の音楽の成績が上がったんです!!!」
私は、もちろんとてもうれしく、そしてこう言いました。
「それは、本来お子さんが持っている力ですよ。私の力ではないんです。お子さんの力です。」
私の考えとして、本来子供の持っている感性は、みな素晴らしいのです。しかし、大人になるにつれて、感性が削られてしまうか、埋もれていってしまう、と言ったところでしょうか.
シュタイナー教育では、次のように述べています。
education(教育)という言葉は、ラテン語の動詞e-ducere(引き出す)からきています。教育の真の意義とは、「引き出す」ことであり、「入れる」ことではありません。シュタイナー教育は、一人ひとりの子供の中に眠っている能力を、目覚めさせることに奉仕してきました。それによって、この教育は、若者たちが自らのうちに、〔強靭さ〕と〔情熱〕と〔知恵〕を見出し、かれらが現代の文明のなかに、最善のものを生み出すことができるように、準備しているのです。
私は、この考えに深く共感します。音楽を教えるには、よき音楽家であると同時に、よき教育者であるべきだと私は思っています。音楽を知ること、それは人間を知ること、音楽を創造することは、一つの生命体を生み出すことと同じです。私は子供たちが、のびのびと大いに自分を表現できる環境作りを目指します。今までレッスン中に怒ったことはありません。子供が自分の思う通りにいかなくて怒って従わせるのは、指導者として失格です。子供は心を見ています。心で相手を感じています。こちらも子供の心の状態をよく見て、方向づけをしていくことです。子供の発言、行動から何に興味を持っているのかを観察し、入口を見つけます。
保護者の方には、お考えやご意見などは、遠慮なくお話して頂いています。その週のお子さんの様子や体調なども、指導していく上で知っておきたいものです。一緒に、お子さんの成長を手助けしていくことが、私の使命だと思っています。
幸せな場を作ること
私は、自分のお教室に来る人たちが、「ここに来て幸せだ」と感じられるお教室を目指しています。お子さんと保護者の方の気持ちに寄り添い、自然と音楽が大好きになってピアノを弾けるようになっていってほしのです。
「昔のピアノの先生は怖くて、つまらなくてそのうちやめてしまいました。」とお話下さるお母さんもいらっしゃいましたが、本当に昔のピアノの先生は怖かったですね!もちろん私も経験しています。でも、怒ったって厳しくしたってピアノ嫌いになるだけですね。恐怖心から行動を起こさせては、気持ちがマイナスですよね。褒められてうれしいとか、ピアノを弾いていて楽しいと思えるプラスの気持ちの方が、心にも体にも健康です。人間は快楽に貪欲ですから、「楽しい」と思えることは、時間が経つのを忘れるくらい集中できるのです。
その心を作ること。そこを基礎として、ピアノを弾く手や体を作っていくべきです。
私はこのお教室を通して、たくさんの人々に出会い、みなさんが幸せになれる場を作ることに、全力を尽くしたいと思っています。